観るものと、生活の日記

「メッシュ」

StudioLife「メッシュ」
話は-★役者さんは★★★

於:シアターサンモール 2005年6月17日19時 M列左ブロック/6月18日12時 M列センター/18時 C列左よりセンター

(東京公演のみ 2005年6月14日~7月3日)

原作:萩尾望都 脚本・演出:倉田淳


出演

  RelierAllier
メッシュ 山本芳樹 岩*崎大
ミロン 曽世海児 高根研一
ドルー 奥田努 青木隆敏
ユフィル 寺岡哲 小野健太郎
エーメ 舟見和利
アレクス 船戸慎士
ポール 牧島進一
早耳のラッタ 下井顕太郎
パンチョ他 大沼亮吉
マルシェ他 関戸博一 吉田隆太
子供時代のメッシュ他 松本慎也 三上俊
パリ市警の警部他 宗村蔵人
警官他 荒木健太郎
エレーヌ 林勇輔
シラノ 山*崎康一
ボス・バン 藤原啓児
サムソン 河内喜一朗 石飛幸治

*字違い



*感想*

○全体感○
役者さんたちが、よかったです。レベルアップ感。特にRキャストが役に 合っており上手い人多かったように思えました。共通キャストにも面白い人がたくさん。 これまで、お話はいいのに役者さんのレベルがもう一歩、みたいなのは あったが、今回は逆。難しいものです。 原作に思い入れがあるとそうなるんでしょうか。今回パリの裏世界みたいな 話で立ち回りもあったけど、普段からヤクザものやアクションを 得意とするところと比べたら、やはりその差は歴然と。 もっと美しい芝居を望んでいたから期待はずれってのもあるし、 かといって、ヤクザもの(のつもりもないでしょうけど)としても キレがいまひとつ…ということで、辛い見方に。

○脚色・演出○

これまでつまらなく感じるときは、原作自体が、「これを舞台化して 面白いんだろうか」と最初から疑いをもつものでした。だから 原作選出に問題あるのかな、と。

でも、今回はあの原作なら「ハズレ」には、ならないのでは、と 心配はしてませんでした。
それが、肉付けがなくなっていて、「原作の筋として 分かりやすく使いやすいとこだけ使用し、あとは切り捨てた」だけの 脚本。正直、つまらなく感じました。
原作は物語集で、そっくり使えない分、脚本や演出の力量問われるところで どうまとめてあるのか、と思ったら。あれ以上できないのかなぁ。

死ぬ思いで父親殺し損ねた翌朝に、「色々いやなこともあったがミロンになぐさめてもらったからもういいや」でおしまい、てことはないはずだ。 あのパリでの暮らし方ポエムは、冒頭に使われるのはよかったが、 ラストには合ってなかったんじゃないかな。もう少し落ち着いてからの 言葉に感じられて。

準主役の割に、ミロンの陰も薄かったかなぁと。見知らぬ少年を得もないのに 泊めてやって世話してやって、そんな度量の大きさとか、贋作作家である 必要とか、そういうのまで描かれてなかったから。 前半のドルーの方がずっと 目立ってました。けどドルーや裏世界のひとたちは、あまり 魅力のある役ではないので、丁寧に描かれても惹かれることがなく。 個人的には、ドルーの方をこそもう少しさらっと流して、ミロンとの 生活の方をしっかり作ってほしかったのだけど。

あと、子どもメッシュと母親が時々現れるけど。回想なのか、 メッシュの空想なのか、よく分からないところも。2歳で母親と別れている はずが、もっと大きくなってからも会っていたのか。 メッシュの近況報告も、母親が聞いてるみたいにしてあったし。母親は、 いつも同じ調子で、悪びれもせず至って爽やか。 「フランソワーズ」「ママ」という呼びかけの繰り返しが、ちょっと退屈。 あまり必要な場面とも、思えなくて。

ほか、1つの椅子をよく使ってたのなんかも含めて、平凡で とりたてて「おお」と思わせるところは、なかったです(辛)。

これまで観ていて、倉田さんは枝葉エピソードを使うタイプでは ないんだろうなーとは予想していたが、ただばっさり削るだけだとは。
あるいは「rue(通り)1」とされてるので、「2」があると考えていいんですか。

※後日談。 原作の残り6話は来年上演とのこと。長編でこそ1つにまとめる(そのまま使うかダイジェストで)が、短編原作だと、そういう扱いなんですか。ううむ。原作をそんな風に使うお芝居って、戸惑い…。短編集であろうと、1つにまとめられてこそ、と思うのですけど。上演を分けるのはいいけれど、もう少しレベルの高い構成を観たかった。原作は、ハード話とフワフワ話と適度に混ぜてありましたが、それを切り取ってぶつ切れで観せるものでもないような。今回は3話につながりがあったけど、完全な読みきりもあるしどうするんでしょうか。
いっそ萩尾さんが脚本書けばいいんじゃないかとさえ思いました(汗)
いや、でも倉田さんがやはり腕を見せなきゃいけないところ…。


○そのほか○

アクション時は、「OZ」でも思ったけど、殴る時、効果音が少しも入らないので フリでやってる感強くて、物足りない。顔をひっぱたくときだけ 入ってましたが。立ち回り入れるなら、もっとキビキビしてほしい。

背景は、ずーと裏通りな感じ。ゴヤの絵が描かれてたりなんかして。 ごみごみした界隈、っていうのはよく出てて、それはそれで いいんですが、ふわふわときれいな雰囲気もまじっててほしかったかもしれない。 ユトリロやシャガールの絵なども出てきたけど、もっと見たかったな。

照明はいつもながら雰囲気があって、特に、出だしの椅子にあたる陽射しの ような明かりがとてもきれい。 音楽もやはり。同じ場面とラストポエム時の曲が印象に残りました。

衣装も、素敵でしたね。特に脇のひとたちの服が目にとまりました。 画商や早耳のラッタは原作よりずっと派手派手に。 ラッタなんてオレンジがかったピンクのジャケット&シャツとは。 目立っちゃいけない職業なのにと思うけど、見栄えありました。 モデル女性も、赤毛ではなく赤いめがねに華やかなワンピースが可愛いらしい。

○もぎり・物販○
17日ソワレのもぎりは、幸運にも及川健ちゃんでした。もう1人と、物販の1人もおそらく役者さん。
18日はマチソワとも、全てスタッフっぽい人。

○キャストごと・役者さん○
<17日ソワレ Rキャスト>

芳樹メッシュ。冒頭の声の響きがきれい。聞き惚れました。 「似合わないんでは~」と心配だった金銀メッシュも特に問題なくて。

「中年マフィアの役ー?」と想像つかなかった奥田ドルーも ちゃんとサマになっていたのでびっくり。中年じゃなくてもハクがあり、 十分悪そうに見えましたよ。
寺岡ユフィルもよくあっていたし、裏世界役の若い役者さんたち、 あのまま街を歩いてたら本気で それ系の人にみえて、道を開けられそうだ。

曽世ミロンが買い物帰りに、山さきシラノが勝手に袋から食べ物をとる やりとり、回によって微妙に言葉が違うようですが、この時は山さきさん 二つ手にもって「プチ」とか言ってました。プチトマト?と思ったが、次いでメッシュが食べてる様子からしたら、ブドウかな。 土曜日にはマチソワともモンキーバナナみたいなのになってました。

「バルーン」の場面。林チコ。ぽやっとした立ち姿に出てくるだけで 笑いを誘われました。とろーんとした喋り方でばかっぽいのがいい感じ。
宗村バー客がメッシュを見て「男かい!!」っていうの、すっごくウケてました。(原作はさらっと「男かい?」どまり)後に見た2回では、そうウケなかったので、空気によるのか、回毎に微妙な違いがあるもんですね。
牧島ポールが、歯をおられたけどすぐマスクをつけて再登場する場面でも、一番笑いが。 牧島さん、しょっぱなお姉言葉の画商に、メッシュをつけまわすポール。個性的な役が どんどんできるのって強みだなぁとおもいます。

船戸アレクス、色気があって悪い感じ。しかしポール、撃ちにくるのが遅いっ。と思ったのは私だけ?撃つならもっと早く。アレクス、メッシュと舞台からハケないでそこへポールが、って訳にはいかなかったのですね。しかし船戸さんは、床に頭もぶつける倒れ方を毎回する訳で、痛そうだしすごい。

後半は、明るい場面も多くて、ほっとしましたね。吉田君のモデル役は きれいだし。その後のメッシュとミロンのやりとりもコミカル。 一番おかしかったのはやはり、林エレーヌが出てくるところ。 仕事から帰ってきて、疲れたのか眉間にシワよせてストレッチしたり シラノとメッシュの芝居に目を疑う様子とか、一挙一動がおかしいわ 迫力あるわ、で笑わせてもらいました。 林さんは、原作よりふくらんだオリジナルチコ、オリジナルエレーヌに なってたのが、余計よかったです。

大詰め。メッシュが父親を撃ち損ねて、ミロンに抱えられていくときから ずっと本当に体調悪くて苦しそうにみえました。(ミロンが風邪薬を 「頭痛止めもはいってるはずだ」と持ってくるときも、この回では 笑いが。)
その後は、原作読んだときも「このセリフを実際に聴いたら 感動するかも」と思えたところ。しかも演じるのは芳樹さん。 迫真の演技、予想以上に感じ入るものがあって、うるうるきました。 繰り返し観たいところです。

ミロンの「フランソワーズ」という呼びかけは、イメージ違い。 ここは親代わりとして声をかけていると思うので、いつものミロンとは声の調子を 変えて愛情を込めてほしかったのです。

<18日ソワレ Aキャスト>

前から2列目のセンター。Rも1度これっくらい前で観たかったな~。 全体の観やすさからいえば、段差がある後半席の方が上ですが、やはり 至近距離に役者さんがいる、オペラグラスいらない、って魅力ありますね。

まぁ、メインのキャストが違うだけで別の芝居のよう。特に、繊細でもろそう なRメッシュに比べ、岩さきさんの逞しく丈夫そうなメッシュは随分 雰囲気違いました。 やはり、原作のイメージからしても芳樹メッシュの方が、役に あってるかな、と思わされましたが、これはこれで新鮮。

芳樹メッシュに比べ、岩さきメッシュは、ちょっとやそっとで動じ なさそうだがずっと真剣。軽い場面では、もうちょっと笑える方向でも よかったんじゃないかな。

高根ミロンは、くだけていい感じに。シラノに果物をとられる場面、 山さきシラノがバナナで「(C'est bonから)ボーン」とか言ってるのを「意味わかんない」と 返したり、驚く時面白い声を出したり。ずっと明るくて楽しかった。 高根ミロンと芳樹メッシュでも見たかったですね。

青木ドルーは、見た目は強面で、夜の街が似合いそう。 が、喋ると舌足らずで若々しいところが。もう少しこなれてから見たいな。 小野ユフィルもいいんだけど、Vシネヤクザものに出られそうな(誉めてる) 寺岡ユフィルに比べると、やや弱々しい感じ。

特にすきだった役は、関戸君のモデル女性。オモシロ可愛くてハジけた笑顔にウケました。 高根ミロンも、愉快な口調になってたし、おかしい場面でした。
帰ってきたメッシュ、Rでは笑いが起こるんだけど、こちらの メッシュ君は本当に怒ってる感じで、笑いどころじゃなくなってました。

シラノとメッシュの小芝居。エレーヌを騙すのはどだい無理な話では、 と思ってたら、タンクトップを脱いだメッシュの逞し~い体つきに「おおっ」と 喜んだ挙句、飛びついてしまうシラノさん。何がしたかったのでしょう(笑) エレーヌもあれじゃ目を疑うしかないですね。

大詰め。芳樹メッシュだと「今後この人、ちゃんとやってけるのかな?」と本当に心配になる感じでしたが、岩さきメッシュは、さっさと乗り越えて生きていけそうに見えました。だから涙は出なかったです。 ミロンの呼びかけへ方の不満は、RもAも同じでした。



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